よく、子どもに「何か困ったことがあったら言うんだよ」と言ってきました。

言うんだよと言っているから、何か困ったことがあったら言ってくるに違いないと私は思います。

でも、子どもはなかなか言ってきません。

言ってこないということは、何も困ったことがないんだ、よかったよかった、と若い私は安心していました。


しかし、言ってこれなかったんです。
困ったことがあったのに、言ってこれなかったんです。
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理由は大きく分けて3つあります。

一つ目は、

「自分が困っているということがわからない。」

困り感に慣れてしまっている子は、困っているということ自体に気づかないことがある。
おなかがすいてたまらないけど、それがいつもだったら、おなかがすいていることが困ったことなんだということがわからないんです。

家できつく叱られる。 でも、それが普通だったら、それが困ったことだということがわからない。

そういうことです。

 自分が困っていることが自分でわからない。
無邪気な顔を見ていると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。


二つ目は、

こんなのは困っているうちに入らないと自己規制する

自分の困り感はよくわかる。
友達からなにかいわれた。
いやなことされた。

困る。

でも、これくらいのことで先生に言っていったら、ちょっと恥ずかしいし、プライドにかかわる。
また、先生にめいわくかけるかもしれない。

僕の困っていることより、もっと困っている人はいっぱいいるはずだ。
こんなの、困っているうちに入らないや・・・。

そう思って自己規制するんです。

先生や親に心配をかけたくない、という気持ちもここに入りますね。

「そうか・・・ずっとそうやってがまんしてきたのか・・・」
これもずいぶん申し訳ない思いをしました。


三つ目は

「いいたくてもいえないや・・・」

これです。
おそらく一番多いんじゃないかなと思います。

何かいいたかったけど、先生に言っていける雰囲気じゃなかった・・・


なんだか忙しそうで、しばらく聞いてもらえそうにない。

なんだか難しい顔でしかめっつらしながら、なにか作業してる。とても聞いてもらえそうな雰囲気じゃない。

「ちょっとまって・・・あとからね」と、言われたが、その「あとから」が来そうにない・・・。


そんな雰囲気を先生がふりまいているから、何か言いたくてもいえない・・。

これも、本当にごめんなさいという気持ちでいっぱいです。


私は、長いこと「子どもがなにもいってこないから困ってないんだ」と思ってました。
成長して大きくなった教え子さんたちから思い出話としてこういうことを話してもらい、初めてわかりました。

「困ったことがあったら言ってね」の後に、

「今、困っているみたいだね」という促しのことばとフォローが必要だったということを。


私の数ある失敗のひとつでした。