始業式で思い出す事がいくつかありますが、そのひとつに「あかちゃんだっこ」があります。

昨日の記事でかいた子どもたちが4年生になる日の始業式。
3年生の仲間とも、そして担任である私ともお別れする日です。
その日の朝は、旧担任として、朝の教室に入ります。
そこで「3年生は楽しかったね。4年生になっても元気でね」とみんなにわかれを述べました。
「さあ、今から始業式があるよ。そのあと、学級編制があるからこれでおわかれだ。みんなろうかにならぼうね」と言って歩き出した時です。

ひとりの女の子がわたしの前に立ちました。
そして言うのです。
「先生、だっこして」

子どもをだっこするというのはとてもすてきなことですが、今の時代は簡単にだっこなんてできやしません。20年くらい前まではさほど気にせず、よく子どもたちをだっこしていました。しかし、今の時代、特に男性が女の子をだっこするなどということは、妙な詮索をする大人にとっては格好の話題の種となってしまうことがあります。だから、近頃は子どもをだっこするというようなことがしにくいのです。

その時も「もうおねえさんになっているのだから、だっこなんて・・・」とことわろうとしました。
しかし、その女の子の目はせっぱつまっていたのです。
私はことわるのをやめました。
「いいよ」といって、その子をだきあげました。
すると、その子が私の首に手をまわし、さらに足までからだにまきつけて、ぎゅーっとだきつくのです。顔は私の胸におしつけてじっとしています。
まさに、あかちゃんのだっこです。
私は、「ああ、必死にお別れをしようとしているんだな」と思いました。
そして、私も抱き上げた手にぎゅっと力をいれてやりました。

しばらく・・とは言っても、おそらく10秒くらいの時間でしかなかったでしょう。
その女の子は、すっと顔を上げると、自分からぱっと床におりたちました。

そしてさっぱりした顔で「先生、さよなら!」といってろうかにはしっていったんです。

こころゆくまでだっこしてもらって、気持ちがふっきれたのでしょう。切羽詰まった顔はなくなり、不安のない、安心した顔になっていたのを思い出します。

子どもは、ぎゅーっとしてやることで安心して後ろを見ずに飛び立っていけるものです。
どこかでぎゅーっとしてやらなければならない子どももいます。

そんなことを、始業式になると思い出します。

その子も、今は高校2年生になっているのですけれども。