「子どもは「子ども」でいることが『成長」の基盤」なのに、教師や大人は子どもに気づかずして背伸びや虚勢をさせているのではないか」

教師人生を終えようとしている先生からの,ある研修会での提言から。総合教育技術2016-4

育ち急ぎ

私は以前から,今の子どもは「育ち急ぎ」をしていると思ってきました。

大人が使うものを使い、大人が話す言葉を話し、大人が着る着物を着、大人が行くところへ行く。そして、大人が考えるようなことを考えています。
 

子どもにはその時代なりの発達の課題があります。5歳なら5歳なりの、10歳なら10歳なりの,その時必要な発達上の課題を十分な時間をかけて解決していかなければ、心が育たないまま、体だけ大人になってしまいます。

はねる


 

よくメディアで言われている。「現在の若い大人たちの中に、子ども時代の思考から抜け出ていないのではないかと思われるような行動や思考をする人たちがいる」ということも,もしかしたらこの育ち急ぎということがあるのかもしれません。
 

余談ですが,うちの長男は,ずいぶん早くつかまり立ちを始めたためか,立ってもよろよろしており,コケるときには頭からばたんといっていたので目が離せませんでした。
次男はいつまでもはいはいしていたためか,立つようになってからは力強く立てていて,こけるときにも上手にお尻からぺたんとすわりこむように倒れていましたので安心でした。
その成長段階にあった成長の課題をじっくりと解決しながら育つ,という意味で分かりやすい例かと思います。


さて本題に戻ります。その育ち急ぎを助けている最大の環境は親です。

育て急ぎ

大人は、逆に子どもを育て急ぎしていはいないでしょうか。
 

早く大きくなって欲しい,早く育って欲しい、という思うあまりに、大人の格好をさせ、大人の行くところに連れて行き、大人の考えをそのまま子どもに伝え、大人のものを持たせる。
 

深夜に郊外の本屋に5歳くらいの女の子を連れてきて,平気で立ち読みをしている若い夫婦の話を以前書いたことがあります。
子どもは本屋の通路を走って回っていますが,おかまいなしです。
まるで,5歳の子どもではなく,自分たちの友達の一人と感じているかのようです。
成長ホルモンが分泌されて脳がどんどん発達していくこの深夜の時間帯,家で静かな環境でしっかり寝せて育ててあげないといけないのに。


こうして、子どもに発達のための十分な時間を持たせてあげることなく一足飛びに大人の社会へ出入りさせてしまっているのではないかというような状況を時々見ることがあります。


若い教師であったころ,ある保護者からこんなことを教えていただいたことがあります。
 

「子どもは幼く育てるのがいいのですよ」


おそらく,その時その時の成長段階に合わせて,急ぐことなくじっくりと育てなさいということだったと思います。


この言葉を聞いてから30数年,私の中で大事にしてきた言葉です。