Lyustyleの教育ちゃんねる

2016年12月

2学期の終業式が近づいてきました。職員室では、ヨーコが通信票とにらめっこしています。
 

「ヨーコ先生,どうしたの?」ユーイチがのぞきこみます。

「あ、先輩。もう通信票の所見はおわりました?」

「いや。まだだよ。」

「あ~よかった。私もまだできてないんです」
 

「ぼくなんか、まだ始めてもいないよ。」

「え~?間に合うんですか?」

「背水の陣って言ってね。もうどうにも間に合わないというところでぐいっとエンジンをかけるんだ。そうすると一気にできるよ。」

「何かあったらどうするんですか?私こわくてとてもそんなことできません」

「まあ、人それぞれだよ。ヨーコ先生は自分に合ったやりかたをすればいいさ」
 

ユーイチは子ども達の所に遊びに行ってしまいました。
 

「大丈夫かな。先輩。」

ヨーコは、ユーイチが「間に合わない間に合わない」と泣きべそをかきながら通信票に向かっている姿を想像してしまいました。
 

「まだ取りかかってないって言っても、ゼロじゃないからね。」

「あ、マキ先生。」

学年主任のマキがいつの間にか座ってにこにこしていいます。
 

「ゼロじゃないってどういうことですか?」
 

「ユーイチ先生は、もうたっぷり書くための材料を用意しているってこと」

「私だって材料はたくさんあるんですけど・・・書こうとするとなかなか書けないんです。」

「どれどれ・・・?」

マキはヨーコの所見をのぞいてみました。
 

「何々。『〇〇さんは、国語をとてもがんばっています。発表もたくさんします。ノートの字がきれいですね。給食をたくさんおかわりしました。黒板消し係をがんばりました・・・・』・・・・。うーん・・・」

マキは頭を抱え込みました。
 

「・・・・だめですか・・?たくさん書いたつもりですけど・・・」

「ヨーコ先生、確かにたくさん書いてるけど・・・。これお母さんになったつもりで読んでみて。うちの子、国語がんばったっていってるけど、何がんばったんだろう?発表たくさんしたのはいいけど、ちゃんとわかってるのかしら。ノートの字がきれいなのは私も知ってる。よく書いてるわ。給食をたくさんおかわり・・・だから何?黒板消し係って何するの?何がんばったのかしら・・・ そうならない?」

ヨーコは「・・・なります・・・」と小さくなります。
 

「字をたくさん書けばいいという訳じゃなくて、具体的にどんな姿だったから、こういうよさがあります、とかここが課題ですのでこうやります、というように書いたらいいのよ」

「はい・・・」
 

「例えばね・・・」
 

マキは手直しをしてくれました。
 

「まず、国語をがんがった、ということから。がんばるにしてもいろんながんばりがあるわよ。例えば・・・」

「『国語では、文から読み取ったことをもとに,進んで考えをノートに書いていました。』とか

『毎日漢字練習を続けて、漢字テストで毎回100点をとることができるなど、努力を継続することができました』とか
 

『友だちの考えをよく聞いて、それらをまとめる意見を発表するなど、友だちがよりよく理解できるような発表をよくしてくれました』とか・・・」
 

ヨーコは目を丸くしています。よくこんなに次々と出てくるなあ・・
 

「こう言うように書いてあげると、『がんばる』という言葉を使わなくても、おうちの方にはすごくよく伝わるのよ。」

「ははあ、たしかに・・・」
 

「その時、より書きやすくなるように、自分の中にテンプレートを持っていたらいいの。」

「テンプレー・・・?」

「意欲的な態度につなげるか、こつこつと積み上げるにつなげるか、やりぬく力につなげるか、友だちの意見をよく聞く、友だちといっしょに学ぼうとする態度とか・・・どういう価値を認めてあげるかをいくつか持っているといいわ。」

「同じ発表でも、このような発表のしかただから意欲的な態度がうかがえる、とつなげるか、友だちの意見をよく聞いて発表したから、みんなの学びをまとめてくれるとつなげるとか・・・」
 

「ふんふん・・」
 

「そして、『こんな具体的なことをした』から『こんな価値がありますよ』というように書いてあげる。そういう文を学習でふたつ、生活でひとつくらい拾い上げて3文くらいで書くようにすると、自分も書きやすいし、その子どものことがはっきりと浮かび上がる所見になるわよ」
 

じゃ、ユーイチが余裕なのは・・・・
 

「ユーイチ先輩に材料がたくさんあるっていうのは・・」

「そうね。昨年、たくさんテンプレートを教えておいてあげたからね。ああやって子ども達と遊びながら、きっとその子の姿をどのテンプレートで価値づけてあげようか考えてるのにちがいないわ」

ヨーコはユーイチも少しは偉いんだな、と思いました。
 

「マキ先生、ちょっとはいい所見が書けそうな気がしてきました。たとえばこの子・・・ポートボールでたくさんパスをしていましたっていうのを・・・・『すぐにシュートが出来そうな位置にいる子どもを見つけてパスをするなど、みんなで勝つために協力しようとする姿がうかがえます』・・っていうのはどうでしょう」
 

「すごい!ヨーコ先生。パスをしただけじゃなくて、意味のあるパスをしようとしているところを先生はちゃんと見ていたんだってことがよくわかるし、それが協力する姿だという価値付けまでちゃんとできてるよ。これはおうちの人も読んでてきっとうれしいわね。」
 

「やったー!」
 

ヨーコはマキにほめられて有頂天になり顔を真っ赤にしています。
 

「協力でもいいし、思考する力にもつなげられるわね。」

そうか・・同じ姿でもよりその子にあった価値につなげたらいいのね。

 

「でもね。ヨーコ先生。私がやっちゃだめって思っていることがひとつあるの。」

「え?禁止事項ですか?」
 

「そこまで大変なことじゃないけど、教師としての意地や自信にかかわるというのかな・・・。私はしないようにしていることがあるの。あのね、それは『コピペ』。同じ言葉を何パターンか作っておいて、当てはまりそうな子にぽんぽん貼り付けていくの。これはやらない。」
 

「でも、あてはまったらいいんじゃないんですか?それに同じ文でも子ども同士で見合わない限り同じ事が書いてあるってわからないし・・・」
 

「そこよ。わからないからこそ。

私たちが見る子どもは一人一人違うので、一人一人に合った言葉がきっと有るに違いない。後から見て、似た言葉でも、これは誰さんに書いた言葉、ってすぐにわかるような文を書きたいと思わない?
コピペはらくだけど、それじゃその子を見ていないことだって思うから、私は絶対にしないのよ」
 

ヨーコは、所見というのは、教師がいかに子どもをしっかり見てその子のよさを伸ばそうとしているのかということに挑戦する舞台のようなものだな、と思いました。

ヨーコの日記

「がんばりました」ではなく、「〇〇など、よく考えていること(さまざま)がうかがえます」のように具体的ピンポイントで書いたらいい。

そのために、いくつか価値のテンプレートを持っておこう。「意欲、継続、努力、協力、学びに向かう態度、考える力・・・」など、具体的な姿をつなげて価値づけてあげられるような・・・

私もコピペはやめよう。後で読んだとき、誰のことを書いているのかが自分でわからない所見は人に伝わりません。

それから他にもこんなことを聞いた。

ほめることよりも認め、勇気づけること

「がんばりましょう」とまるなげするのではなく、「こういうことが課題なので、次学期はこうしましょう」というように具体的な課題と方法を書く。

学校内での受賞や、選出されたことなどは記録してあげること

終業式の朝、ユーイチが目の下にくまを作ってあらわれました。
 

「あらら!ユーイチ先生、その顔いったいどうしたの」

マキが尋ねました。
 

「はい・・ついさっきまで所見書いてました。」
 

「背水の陣って言ってたけど、余裕あったじゃないですか」とヨーコ。
 

「あ~昨日の番、さあ背水の陣だ、今から夜中までがんばって所見書くぞ~!と思って書き始めたとたん『メリークリスマース』っていって、昔のともだちがワインとケーキ持って遊びに来たんだ・・・早く帰ってくれーって思いながら、それでもせっかく来てくれたんだし、と泣きそうな気分で友達に合わせてたけど、結局帰ったのが夜中の2時。それで今まで・・」
 

「それで・・・・間に合ったの・・・?」

「なんとか・・・・。もう、次から背水の陣はやらない・・・」
 

ほーら思った通りとも思うヨーコでした。
 

ヨーコは、それでも5時間ほどで書き上げるなんてすごいなーと思いました。
 

やるじゃん。ユーイチ先輩。私はやんないけど・・・。

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学年主任のマキ先生は、放課後、子どものノートを見終わって職員室に向かっているとき、ヨーコの教室の前を通りました。
すると、教室に電気がついてなにやらかちゃかちゃと音が聞こえています。


「だめだ~」

「あ~やっぱりだめ・・・どうしてなの・・・」


ヨーコはなにやらぶつぶつ言っています。


マキは、またヨーコが何かに困っているんだなと思いました。


ガラガラガラ・・

マキは教室の扉を開けて中に入りました。


「あ、マキ先生」

「どうしたの?真剣そうにぶつぶつつぶやいて・・・だいじょうぶ?」

「あの~、黒板の字がどうしてもゆがんでしまうんです。みてくださいよ」


マキが見ると、黒板には縦に横に、いろいろな字が書かれています。

明日の授業の内容のことや、数字、あいうえおなど、さまざまな内容の文が書き並べてあります。


「まあ、たくさん書いたわねえ」


見ると、縦の字は下に行くほど左によれ、文字の列は「ノ」の字のようになっています。

また、2行目、3行目になるにつれて書き始めの字がだんだん上がって行っています。

よくあることです。


また、横書きの字は、上がったり下がったりして波打っています。

よくあることです。


「ひどいでしょ?」

ヨーコはなさけなさそうにつぶやいています。


「よくあることよ。」


「え?」


「黒板に字を書くなんて、これまでの人生の中で何度もなかったことだから、うまくいかなくてあたりまえ。だれでも最初はこんなになるのよ」

「本当ですか?」

ヨーコはほっとした顔をして、目をくりくりさせています。


「縦の字はゆがんでななめになるし、横の字は波打つし。人によっては右上がりになったり右下がりになったり・・・。ちなみに私は、ヨーコ先生と同じだったわよ」


マキの優しい顔を見て、「わあ・・マキ先生も私と同じ悩みを持ってたんだ・・・」とヨーコは安心しました。


「でも、どうして今ではあんなにきちんとまっすぐに書けるようになったんですか?」

マキの黒板の字はいつ見ても整然としてとても見やすく、ヨーコは自分も早く黒板の字をマキ先生のように書けるようになりたいと思っていたのです。


「こればかりは意識的に練習を積み重ねないと、ただ毎日書いて消してを繰り返すだけじゃ、いつまでたったもまっすぐ書けるようにはならないわ」

ヨーコはすこしがっかりしました。


確かにそうですよね。一朝一夕にできるようなことではないかもしれません。それにしても何か特効薬があるかと思ってたんですが・・・・


「あるわよぉ~~」

マキがもったいぶったようにいいます。


「え?やっぱりあるんですか?あしたからすぐにでもまっすぐに書けるようになる特効薬・・・」

「とても簡単なこと。」


ヨーコはわくわくしています。


「黒板の字を消すとき、黒板消しでうまく字をけすのよ」


「は?」


私は字をまっすぐに書けるようになりたいのに、なんで消す話を?


鳩が豆鉄砲を食らったような顔。ヨーコはこの顔をこれまで何度したことだろうと思いながらぽかーんとしています。


「いい?今からこの黒板を消すわよ。次の授業は何ということにする?」

「次・・・。あの、じゃ、国語で」

「みてらっしゃい」


マキは、黒板の一番右から、黒板消しをたてにすーっと上から下まで一本線で消しました。


それから次の行に移り、また上から下まですーっと消しました。消した線が2本並んでいます。


マキは同じ仕草で、スピードを上げて黒板全部にたての一本線で消していきました。1分もかからなかったでしょうか。


「どう・・・?」

「どうって・・・あ!」


ヨーコは目をまん丸にしました。


黒板には、見事な縦線が何本も引かれています。黒板消しの消し跡が、線に見えるのです。


「これで書いてみて」


ヨーコはチョークに飛びつき、字を書いてみました。


消し跡が縦のガイドになり、一番下まできちんと縦に一本筋の通ったように字を書くことが出来ました。


「わああ・・・・すごいですね」

「ね。便利でしょ。前の時間の終わりに、次の時間の字の方向に合わせて黒板消しを走らせるだけでまっすぐ書けるのよ」


ヨーコは、今度は、自分で黒板を消してみました。


「次は理科・・・」


ヨーコは、黒板の一番左上から黒板消しを横にすーっと走らせ、順番に下に消し後を作っていきます。


「うわああ・・きれいに横線ができる・・これならまっすぐにかけますね!すごい特効薬」

「でしょ?私も若い頃先輩に習ったときにとても助かったのよ。」


「マキ先生だって、そんな時があったんだ・・・・」


「そうよ。だれでもそう。先輩から習いながら、いろんな技が伝えられていくのよ。
でもね、これはあくまでも特効薬。これに頼ってばかりではダメよ。こんな線がなくても横にまっすぐかけるように、意識して書いてね」


二人の様子を、外からユーイチがそっとうかがっていました。

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そして「しめしめ」とつぶやきながら自分の教室で黒板の消し方の練習をし始めたことなど、二人はしりません。・・・とユーイチは思っていました。

ヨーコの日記

何にでもうまくいく技があるんだなあ。マキ先生も先輩から習ったし、先輩もそのまた先輩からうけついできたんだ。

この方法は、黒板を丁寧に消す、ということにもつながる。これまではただ消えればいいと思って消し後のことなんか考えずにぐじゃぐじゃに消してた。でも、こうやって一本一本消すと、時間がかかるみたいだけど、そんなにかからずにその上きれいに消せる。

うれしいなあ。あしたから早速つかってみよう。でもこれに頼らず、まっすぐ書けるような練習も意識してやらなきゃ・・・・

そういえば、ユーイチ先輩も外から見てたけど、きっと明日から同じことをまねするのに違いないわ。故黒板の字を見て、「すごいですねー」って言ってあげようっと。

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「なかなか完食にならないわね・・」
 

ヨーコは給食後、飯缶をみながらこぼしています。残した子どもが悪そうにしています。ヨーコはあわてて「いいのよ。一生懸命食べたんだもんね。」と言ってなだめますが,子どもはヨーコ先生を残念がらせていることがつらいみたいです。
 

「いけない。いけない。顔にでちゃう。でも食が細い子は先輩のクラスにもいるはずなのにな。何で毎日間食なんだろう。」
 

残菜は減ったけどどうしても食べてしまえない子どもはいます。

ヨーコは、ユーイチ先輩のクラスには、何かまだ秘密があるのではないかと思いました。
 

残菜は少しだからいいじゃないかとも思うのですか、やはりそれでもヨーコは残すことをもったいないと思うのです。そうして、子どもたちにもほんの少し残すだけでももったいないんだという気持ちを持ってもらいたいのです。

だからと言って、胃袋が小さい子どもに無理やり食べろというわけにはいきません。
 

一体、先輩のクラスではその辺りをどのように折り合いつけているのでしょうか。
 

ヨーコは、今日は給食当番が準備をするところからそっとユーイチ先輩のクラスを伺いました。
 

給食当番の子どもたちは、いたって普通に給食を食器に分けています。

「特に何かあるわけじゃないなぁ、うちとやり方は同じだし」

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ヨーコは、秘密があるとしたらつぎ方にあると思っていました。きっと食べられない子には少なくついで、欲しい子にはたくさんあげているのです。
 

ヨーコも以前、食べられない子は缶に減らしにこさせたことがあります。思った通り、子どもたちは嫌いな野菜を減らしにきました。食べられる子どもがその分食べてくれましたが、ヨーコは好き嫌いを作ってしまっているんじゃないかと感じ、次の日から減らすのをやめたのです。
 

でも、ユーイチ先輩はきっとそれをしているのに違いありません。
 

当番が食事を配り終えると、ユーイチが出てきました。
 

「やはり、今から減らさせるのね。」
 

案の定、ユーイチは「食べられない子は減らしにきなさい」と言いました。

子どもたちが食器を抱えてきて、ご飯を減らしています。
 

「やっぱり。この子たちはこのおかずが嫌いなんだ。だから減らしてる。そして食べられる子どもが食べて完食にしてたんだ。それでいいのかなあ」
 

子どもたちは給食を減らすと元に戻りました。
 

「食べられる子どもにたくさん食べさせた方が、残菜がもったいなくないだけいいのかな。やはり先輩のように減らさせた方がいいのかなあー」
 
 

昼休み、ヨーコはユーイチに尋ねました。
 

「ユーイチ先輩のクラス、食べる前に減らさせてるでしょ?ああやったら好き嫌いが増えないですか?」

「ああ、ヨーコ先生、、何を見てるのかと思ったら。どうして?」

「私は一度減らさせたことがあるんですかど,嫌いなおかずの時にはわーっと減らしにきたのでやめたんです。」

「ああ,好きに減らさせたらそうなるだろうね。」

「どういうことですか?」

「そうだね。子どもには胃袋と相談させなきゃ」

「え?胃袋と?」
 

「そう。減らすのは,嫌いだからではなくて,量が多いから減らすんだ,ということ。今日の給食は自分にとって量が多くて食べられないから減らします,って自分で相談させるんだよ。」
 

「・・・わかるんですけど,子どもってそんなに素直に考えないと思うんですけど。食べられませーんとかいいながら,嫌いなおかずを減らしに来るんじゃないですか?」
 

ヨーコは,自分のクラスの子どもたちの顔を思い浮かべながら「絶対にありうるわ」と思いました。
 

「ヨーコ先生。そこが工夫だよ。工夫。」

「ユーイチ先輩,もったいぶらずに教えてくださいよ。いったいどうしてるんですか?」

「あのね,よーく自分の胃袋と相談するんだけど,減らしたら向こう3日間は好きな給食が出てもふやせない,というルールがあるんだよ」

ユーイチは得意そうに言います。
 

「え?」
 

ヨーコは目をぱちくりしています。
 

「あのね。減らすってのは,量が多くて食べられません,と胃袋と相談して決めたんでしょ?その胃袋は明日には大きくなってるってことはないでしょう,ということだよ。」

「あ,,なーるほど・・」

確かにそれならうまくいきそうです。
 

「もしかしたら嫌いで減らしたいということもあるかもしれないし,そういうこともあるよ。そこは教師として受け止める。子どもはそこで明日の好物をがまんしてまで今日残すのかどうか折り合いをつけるんだよ。それで今日のこしたら,いさぎよく向こう三日間はお替わりはしないんだ。」
 

なんだか,いつものユーイチとは違って立派だなあとヨーコは思いました。
 

「ヨーコ先生。そこがもしかしたら『秘密』なのかな。」
 

横から主任のマキが割り込みます。

「あ,マキ先生!」

ユーイチがきまり悪そうに頭をかきます。
 

ヨーコは,ユーイチはマキからこのことをならったんだなと思いました。
先輩にしては立派なこと言ってたし。
 

「確かに嫌いだから減らすっていうのはよくないけどね。でもどうしても食べられないものってあるじゃない。それを何が何でも食べて慣れて,食べられるようになりなさい!と言われるのは,大人でもつらいことじゃない?だから子どもには,どうしてもだめなときは減らせるんだ,という安心感を与えてあげた方がいいと思うのよ。」

ヨーコの日記

どうしても多くて食べられない子は確かにいる。

うちのクラスのひなちゃんは食が細いから,毎日残して悪そうに返しに来る。

明日からどうしても量が多くて食べられない子は,自分の胃袋とよく相談してへらしていいことにしょう。

もちろん,向こう三日間好きなものでも増やせないよ,というルールで。


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