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今回は「学力の経済学」からです。

「学力」の経済学
中室 牧子
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015-06-18



私たちは以前から、自尊心と学力には関係があると言うことは経験的にわかっていました。学力が高い子は自尊心が高いことが多いので、子どもの自尊心を高めようと子どもを褒めたり、成功体験を積み重ねさせたりといったことをよくやっていました。


ところが科学的根拠という視点から見ると、このふたつは相関関係はあるが、決して自尊心が高まると学力が高くなるという因果関係にあるわけではないことがわかりました。


「自尊心と学力の関係はあくまで相関関係にすぎず,因果関係は逆である。つまり学力が高いという「原因」が,自尊心が高いという「結果」をもたらしているのだ。46」


学力が上がるから自尊心があがるのだということが科学的根拠を持って示されました。

私たちがうすうす思っていたことは間違いであることがはっきりしたわけです。


最初にこれを読んだときには驚きました。しかし、科学的根拠があることであるから受け入れざるを得ません。


私たちは、子どもの学力を高めるためには他の方法を探さなければならなくなりました。


しかし、子ども達が生き抜いていくために必要な自尊心は、学力を高めれば高まるのです。それがはっきりしたということは大きな事です。「学力の向上」を目の色を変えて達成しようとしている私たちにとって、それは単に点数が上がるのだというだけでなう、その子どもの未来にかかわる大切な資質を高めることになるのだということがわかったからです。


もうひとつ、おそろしいことが述べられています。

それは、

「悪い成績を取った学生に対して自尊心を高めるような介入を行うと,悪い成績をとったという事実を反省する機会を奪うだけでなく,自分に対して根拠のない自信を持った人にしてしまう 48」


ということです。


「君はもともとできる子なんだから・・・」というようなことを言うと言うことは、負の結果を生んでしまうということです。

自尊心を高めれば学力が上がるどころか、学力を下げることもあるというのです。


子ども達に根拠のない自信を持たせるということは子ども達のためにならないばかりか帰って負の効果をもたらしてしまう。


悪い成績には、よかれと思って自信をつけさせるために励まそうとするのではなく、事実を知らせた上、具体的な改善点と努力のしかたを述べるということが必要だと言うことですね。

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一昨年の「学力の経済学」以来,非認知能力についての言及がさまざまな場所で見られるようになりました。
私も,「学力の経済学」で非認知能力を意識した一人です。
中教審の答申でも見られるように,次の指導要領の目指す子供の学びの姿を見ると,この非認知能力の育成も視野に入れていかねばならないなと思います。

そこで,「知的生活ネットワーク」でもやっていた「一テーマ30冊マラソン」という手法で,この非認知能力をテーマにして本を読み進めてみようと思いました。

「一テーマ30冊マラソン」を始めるために考えたこと | 知的生活ネットワーク

そこで,先日懐かしさのあまり買ってきた「教室ツーウェイNEXT」の第2号から始めることにしました。

教室ツーウェイNEXT創刊2号


ちょうど,この号の特集が「”非認知能力”で激変!子どもの学習態度50例!」だったのです。
「教室のすべての子どもの学力を強靭化する非認知能力の情報を満載!」と実に魅力的なタイトルです。

非認知能力についての読書はじめなら,まず「学力の経済学」とか「やり抜く力 GRIT」あたりからだろうといわれそうですが,どちらももう何度も読み返しているので,後回しということで新鮮な方から。

小学校の現役教師が書いている2次解説的な記事が多いなかで(それもいいのですが),中には文科相補佐官でG7教育大臣会合の議長代行をされた鈴木寛東京大学大学院教授・慶応技術大学教授など,専門的な見地からの記事も多く,これから「学力の経済学」や「GRIT」を読もうかなと思っている方への興味の入り口になると思います。

非認知能力に関するさまざまな研究が示されているのはとてもありがたいのですが,教師の執筆者が専門的な研究や向山実践の紹介だけでなく,自分の教育実践を非認知能力の視点からとらえなおして価値づけてみるようなアプローチで書いた記事がもっとあれば,自分の学級でどうしたらいいのかな,ということがわかりやすかったな,と思います。

巻頭特集の「今話題の『非認知能力』って何?」は,玉川大学教職大学院教授 谷 和樹 氏の論文です。
非認知能力の種類が簡略に示され,それを育てるハイスコープ教育財団のカリキュラムの特徴が示されています。
「毎日決まったルーティーンがある」など,興味深いです。

つづく大阪大学大学院特任講師の 和久田 学 氏の「教室に直結する非認知能力とは」という論文は,非認知能力を教室で育てるためにできることととして「実行機能を育てること」を挙げられており,これは必見だと思います。
教師が高い非認知能力を要求される,というところは確かに納得しました。
子どもは教師の問題解決を固唾を飲んで見守っているのです。

これから数回にわたり,学びと感想を述べていきたいと思います。

 

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